介護施設での「見守り」
介護施設における「見守り」は、介護士が利用者の近くにいて、いつでも必要な援助を提供できるようにすることです。利用者の体に触れることなく、介護士が利用者の行動や言動を観察する、といったほうがわかりやすいかもしれませんね。
なぜこのような見守りを日常的に行うのか?それは、利用者は転倒や誤嚥などさまざまなリスクを抱えているからなんですね。特に、認知症の利用者は予想外の行動が多いので見守りが必須!見守りによって危険行動を制御できるので、事故を未然に防げますよ。ただし、認知機能が低下しているとはいえ、理由なく行動することはありません。必ず彼らなりの理由があるので、利用者の状況に応じてサポートするようにしてくださいね。
目的
介護施設における見守りの目的は、「事故を未然に防ぐ」「急変への備え」「利用者の能力を引き出す」の3つです。1つずつ説明していきますね。
まずは「事故を未然に防ぐ」について。これは利用者の転倒・転落などの事故を防ぐことです。高齢になると筋力が衰え、病状によっては歩行が不安定な場合もありますが、もし転倒しても介護士が見守っていればすぐにサポートできますよね。それに、高齢者は嚥下機能も衰えているので、誤嚥などの嚥下事故も起こりやすいんです。そのため、介護士は食事の介助時はただ食べさせるのではなく、誤嚥を防ぐために様子を見守っているんです。
事故はいつ起こるかわかりません。しかし、起きるときはあっという間なので、事故を未然に防ぐためにも注意深く観察しなければいけませんよ。
次に「急変への備え」について。これはそのまま「いざという時に備える!」ということです。利用者の多くは高齢で多くの病気を抱えています。常に体調不良のリスクを抱えているので、わずかな変化も見逃さないようにすることが大切ですよ。血圧や体温、脈拍などのバイタルはもちろん、普段と違う行動や言動がないかを見定めます。
最後に「利用者の能力を引き出す」について。これは利用者が自分でできる範囲を増やし、自立行動を促して日常生活動作(ADL)を引き出すことです。転倒・転落、誤嚥などのリスクはありますが、食事、歩行、排泄、入浴などの日常生活動作をできるだけ自分の力で安全に行えるように見守りを実施しましょう。安全な状態で日常生活動作を実践することで能力の維持・向上だけでなく、尊厳や自尊心も同時に守ることができますよ。
「見守り」=「監視」ではありません。周囲に潜むリスクを回避しながら、その人らしく快適な生活を送れるように環境を整えることが見守りの目的です。